ペルシャ絨毯を選ぶのは、知識がないと難しい・・ある意味でこれは正しく、別の視点からはそんなことはありません。このページではペルシャ絨毯の難しさの理由と、後悔しにくい選び方についてお伝えします。
ペルシャ絨毯の難しいイメージには、日本特有の事情があります。
80年代の日本で一世を風靡したペルシャ絨毯は、多くがシルク絨毯でした。美しいペルシャ絨毯は絵画と同じく投資の目的にもなり、相場に左右される価格はときに非常に高額になりました。
シルク絨毯は素材の質や糸の染めなどで品質が異なり、多くの違いは目で見てもわかりません。なお、美術的価値の高いアンティークと呼ばれるものもあり、これらは真偽をはじめ希少性などの付加価値がより難しい要素となっています。高価なためにときには不誠実な商品も入り混ざり、見極めにはかなりの経験と知識を必要とします。
こうしたペルシャ絨毯を自分で選ぶのは確かに難しく、絨毯を見分けるよりも、信頼できる販売業者を見分ける方がむしろ大切です。
トライバル絨毯という呼び名も、ペルシャ絨毯の印象をややこしくしています。
トライバル絨毯(トライバルラグ、部族絨毯)とは、ペルシャ絨毯の分類のひとつです。主に遊牧民族によって織られるウールのペルシャ絨毯で、それぞれの伝承模様を特徴とします。多くのペルシャ絨毯が織られる町の名前で呼ばれるのに対し、これらの絨毯は主にそれぞれの部族の名前で呼ばれ、トルクメン絨毯やギャッベもその仲間です。
畳文化の日本では長い間ウール絨毯の市場は広がらず、ペルシャ絨毯といえばシルク絨毯やアンティーク、有名産地の工房で織られる資産価値の高いものが主流でした。トライバル絨毯はこれらのペルシャ絨毯とは明確に区別されたため、別種の絨毯のように思われるようになったのです。
ペルシャ絨毯全体を扱う場合に、日本以外では特に区別はされません。イランの絨毯博物館では宮廷工房の華麗な絨毯と共に叙情豊かな遊牧民の絨毯が展示され、それぞれの魅力を放っています。
個性的な特徴のために「トライバル絨毯」の愛好家も多く、また中には非常に緻密な織りのものもあります。工芸としての精緻を極めるのは工房織りの絨毯ですが、絨毯の本質である糸や染め、織りや文様の美しさはときに優劣つけがたく、その価値は一枚一枚の秀逸さ、そして見る人の心にゆだねられます。
ペルシャ絨毯が欲しいのに、調べれば調べるほど不安になってしまう・・・迷路にはまってしまったら、肩の力を抜いてみてください。どんな絨毯が好きですか?
自分が使うペルシャ絨毯を選ぶとき、その基準はとてもシンプルです。それは気に入った絨毯であるということ。難しい物差しにとらわれず、好きなものを自由に選ぶ。それが一生使い続ける大切な絨毯の、後悔しにくい選び方です。
もうひとつの大切なことは、販売業者を選ぶことです。ペルシャ絨毯の知識があり、質問に丁寧に答え、購入後も相談ができる店舗であることが信頼の目安になり、長く使っていく上でも安心できます。
ペルシャ絨毯には数多い種類があり、厚みやサイズもさまざまです。でもすべてに共通することは、とても長寿であること。絨毯はほんのいっとき預かって使い、次の使い手に渡していくもの・・そんな考え方があります。毎日眺め、心地よく使い育てていく、お気に入りの1枚をぜひ見つけてください。