深い紺を背景に浮かぶ大小さまざまなひし形や星。形も輝きもそれぞれに異なる恒星や惑星のように色を変え大きさを変えながらリズミカルに構成されたモチーフは、一つ一つがくっきりとした個性と存在感を表しています。ひし形のメダリオンの中央に浮かぶ美しく配色された星は、ひらめく蝶のような小さな星々に取り巻かれ、水をたたえたような青が濃い糸色の中でひときわ明るく映えています。小宇宙を思わせる中央部は2重の枠模様に縁取られ、蔓花をかたどる連続模様がたおやかで女性的な印象を強めています。
テヘランの北西にある、タラガンという町で1970年代に織られたキリムです。織り上がりはおそらく倍程度の長さの細長い形状だったと思われ、上下の端はどちらも裁断されて枠模様部分が新たに織り直されています。織り足し部分はオリジナルに非常に似た色の糸が使用され、近くで眺めて触ってみるとまだ新しい織り目のざらりとした風合いでそれとわかるのですが、遠目にはほとんど違和感がありません。コットンの縦糸に中細の横糸で細かく織り詰められ、モチーフの細部もかっちりときれいに織り出されています。