やわらかな赤の濃淡の間に浮かぶくっきりとしたモチーフ。バリエーション豊かな配色の変化を見せながら繰り返される連続模様の間には、羽のあるグリフォンのような動物が印象的に織り込まれています。穏やかな中にも抑揚のついた柄行が魅力的なこのキリムは、イラン北西部・ダシュテモガンという地方で織られたスマックキリムです。
スマックとは、地の平織りに追加の色糸を巻きつけながらモチーフを織り出す技法で、非常に手間と技術を要しますが織りあがりは繊細で美しく、またとても丈夫です。このキリムは色糸に比較的細めの柔らかな糸が選ばれ、細かなモチーフは丁寧に織り出され、表面の手触りはさらりとやわらかです。敷物として十分な厚みがありますが、スマックキリムとしては比較的薄手で全体に柔らかな質感です。赤や紺を地としたはっきりとした帯模様の間には淡い緑と黄色の層が細かく挟まれ、重厚な趣に軽やかさを添えています。両端の鮮やかなえんじのかがり糸も艶やかな、印象的なキリムです。

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