イラン北東部の町、グーチャンのキリムです。クルミの皮などで染める渋みのある色合いと、平織りの上に少し太い色糸で刺繍のようにモチーフを織り込む技法（ジジム織り）が特徴です。素朴な手触りや少し具象的なモチーフに、自然の息遣いを感じさせるキリムです。

少し弓なりにそったすらりと長い織り地を、交互に織り分けるベージュに浅い水色。珍しい配色の地色は枠模様と左右の櫛にぱっちりと区切られ、6つの蝶と3頭のラクダがそれぞれの升目を華やかに埋めています。
染めていない自然なベージュは白には遠くほの黄色く、十分な色味を感じるのですが、これもかすかに羊毛色を透かして淡く染まった水色とともに涼やかな明るさを広げて見えます。長くもたげた首が何ともユニークなラクダたちは皆一様に左を向き、真っすぐに遠くを見つめて吉報を待つようです。