陽光の下で象牙色に映える明るい羊毛のベージュの中に濃く艶やかに、無数の方形の景色が組み積み上がり、幻想の城郭を浮かべています。
藍、茶、黄、えんじ、緑と数え上げればとりどりの色糸を駆使しながら、濃淡のリズムに暖色と寒色の不思議なバランス、そして風のような羊毛色がカラフルなのにむしろ静かな、響くような調和を織りなしています。
それぞれの領域にはデザインに工夫を凝らした幾種かの植物に、ヤギとその世話をし戯れる女の子、町の夜の窓が揺らめく色彩や幾何学模様の間で思い出のように浮かんでいます。
枠色をはじめ無染色の羊毛色がベージュに茶、グレーの濃淡を色むらとともに豊かに担い、黄やえんじ、青や緑の染め色の中でも染めむらとともに濃い繊維色がほの濃い抑揚を染み出して透明感のある色世界をたたえています。

■ファイン・ギャッベについて

細かなモチーフに、つやの良いなめらかな毛並み。ふかふかとした厚みが身上の通常のギャッベに比べ、見た目も質感も繊細なこの種のギャッベは、いわゆる「ファイン・ギャッベ（リーズバフ）」と呼ばれるものです。
ファイン・ギャッベには細く上質なウールが使用され、織りの密度は通常のギャッベの4〜5倍以上と細かく、ペルシャ絨毯に近いものです。通常のギャッベでは1つの織り目に2本の糸を織り込むのに対し、1つの目に対し１本の糸を縛るためより細かな仕上がりとなり、手間もかかるため仕入価格も3倍程度となっています。日本では販売会社によって名前のつけられたものをよく見かけますが、現地の仕入の時点では単に「細かい織り（リーズバフ）」と呼ばれます。
毛の一本一本が目立たない均一な表面はするりとなめらかで、細かなモチーフがきれいに浮かび上がります。モチーフの輪郭を美しく出すために多くは薄めに刈り込まれますが、毛足が密なので歩くとやわらかな弾力があり、軽やかな見た目からは思いがけないほど重く、床に吸い付くように収まります。全体の質感はしなやかで、薄手のものはくにゃりと折りたためるほどです。薄いものはもとより厚手のタイプでも遊び毛は非常に少なく、使い始めからほとんど気になりません。ギャッベの豊かな色彩と自由なモチーフ、ペルシャ絨毯の繊細さと上質さという、両方の特徴を併せ持った絨毯です。