ひたひたと淡く入り混じる茶やグレーの流れを浮かべたまろやかなベージュに、装いをこらした方形が15個、ぱっちりと彩りを並べています。
大きく小さく織り込まれた入れ子の方形にちらちらと揺れる点描。時に女の子やヤギ、中には双頭のヤギを主人公に一コマずつ色やパターンを変えた方形は、くっきりとした空色と寝かせたようなまろやかな赤や緑を基調として、パズルのようにひとつの表情を完成させています。
それぞれの方形は点々と連なる淡いオレンジの小花に区切られ、自然なベージュのさざ波のような艶めきやモチーフの点描と相まって煌めくような、瑞々しい印象を与えています。
毛足はそれぞれの先をほぐし、ぎゅっと詰められてしっかりと立ち上がっています。つんと上を向いた毛の集合は安定した手ごたえとしっかりとした弾力を生み、表面に指を立てると「くにゅ」と心地よくへこんでまた持ち上がります。馴染みあった毛足は撫でるとするりと滑らかで、細やかな毛の感触を手のひらで押してみると腰のある毛足のほっこりとした抵抗を感じます。

■ファイン・ギャッベについて

細かなモチーフに、つやの良いなめらかな毛並み。ふかふかとした厚みが身上の通常のギャッベに比べ、見た目も質感も繊細なこの種のギャッベは、いわゆる「ファイン・ギャッベ（リーズバフ）」と呼ばれるものです。
ファイン・ギャッベには細く上質なウールが使用され、織りの密度は通常のギャッベの4〜5倍以上と細かく、ペルシャ絨毯に近いものです。通常のギャッベでは1つの織り目に2本の糸を織り込むのに対し、1つの目に対し１本の糸を縛るためより細かな仕上がりとなり、手間もかかるため仕入価格も3倍程度となっています。日本では販売会社によって名前のつけられたものをよく見かけますが、現地の仕入の時点では単に「細かい織り（リーズバフ）」と呼ばれます。
毛の一本一本が目立たない均一な表面はするりとなめらかで、細かなモチーフがきれいに浮かび上がります。モチーフの輪郭を美しく出すために多くは薄めに刈り込まれますが、毛足が密なので歩くとやわらかな弾力があり、軽やかな見た目からは思いがけないほど重く、床に吸い付くように収まります。全体の質感はしなやかで、薄手のものはくにゃりと折りたためるほどです。薄いものはもとより厚手のタイプでも遊び毛は非常に少なく、使い始めからほとんど気になりません。ギャッベの豊かな色彩と自由なモチーフ、ペルシャ絨毯の繊細さと上質さという、両方の特徴を併せ持った絨毯です。