濃淡の青に藍、白を基調に伸び、広がり、生まれゆくモチーフは、フィールドをひたりと満たすピンクを躍動的に埋め尽くしています。くっきりと描かれた３つの大きなメダリオンすらも埋もれてしまうほどダイナミックな文様に圧倒され彷徨う視線は、ふと差した陽の光のもたらす効果にもう一度驚かされます。
イラン北西部のヘリーズという村で織られたこの絨毯は、背景色のピンクと一部の白いモチーフに、シルク糸がふんだんに織り込まれています。
サバラン山脈の生む強く腰のある羊毛の耐久性、家庭織り特有のユニークな美しさに定評を持つヘリーズの絨毯は、魔法の模様と異名をもつ独特な直線模様でよく知られています。この絨毯は洗練された直線模様とは異なる非常に素朴な、黎明期からの個性的な流れを汲みながら、目くるめくような不思議な感覚をシルク糸と独特な文様が呼び覚まします。
フィールドを埋める文様は花と葉、8羽の鳥を組み合わせたメダリオンの花を中心に、ひし形に十字、六角形に八角形と、幾何学的な大きな形を所狭しと並べると思えば、その隙間には鳥や花、さまざまな記号に星とも点ともつかない小さな欠片までが叶う限りに織り込まれています。