いばらの蔓に覆われた藍と赤銅色の庭をじんわりと照らす黄金色の光。
ブルーグレーの六角形を入れ子のように包んでゆく枠組みは色彩を変えながらそれぞれに細かな花格子を織り詰め、神秘的なたたずまいを広げています。半幾何学的な文様はその色使いの変化により中央には優美なピンクの薔薇を浮かべ、その周囲には生い茂る葉を、藍はひそやかに沈む夜を思わせます。すべての配色には鈍い黄色みが秘められ、角度を変えて眺めると目を覚したように浮かび上がる、ほの白いほどに全体を覆う黄金色の輝きに驚かされます。
イラン西部のセネの町で1980年代に織られた、クルド族の絨毯です。かつて良質な絨毯は「セネ結び」と称えられたものですが、この絨毯も詰んで堅牢な質感、なめらかで心地の良い手触りが織りと糸の質の高さを肌に感じさせます。
コットンのたて糸に細いウールを用いて綿密に織りあげられた毛並みは1平方センチ辺り約16目のペースでかっちりと詰められ、複雑に入り組んだモチーフの輪郭を美しく刻み出しています。