ほの黄色いベージュに涼やかな水色、かすかな甘みを差すピンクが視界で溶け合い、響きあう明るさ。結晶のような文様は淡い色味を揺らめかせ、時おりきらりと小さな輝きがいちめんに浮かび上がります。
小さな花や葉を組み合わせた格子模様、ヘラティの繊細な造形が寄木細工のように埋め尽くすこの絨毯はイラン東部・コラサン地方のムードという町で織られたものです。
やわらかな毛並みと堅牢で精密な織り、特徴的な文様が際立つムードの絨毯は、シルク絨毯に注目の集まった日本ではまだあまり知られないものの、実はアンティークの昔から培われてきた伝統と技術による良質なウールペルシャ絨毯として高く評価されています。
高度に様式化されたヘラティは、丸く開いた小さな花を細いひし形やくるんと巻いた三日月型の葉で囲み、さらに小さな花や枝と共に格子を繋げてゆきます。格子の核となる花の芯にはシルク糸が織り込まれ、入り組んだ造形のほんの一部でありながら、規則的に差されたシルクの白はウールとは異質な明るさを際立たせ、光の加減と角度によって目覚めたように一面に静かな艶めきを広げます。